About
江戸時代、日本酒の酒蔵として建てられた京町家を改修した「お匙 京都」は、OSAJI初となるグローバルコンセプトストアとして”醸す”をテーマに、OSAJIの美容理念に基づいた体験をお届けいたします。
OSAJI製品を体験いただくサロンや、甘酒をはじめとしたOSAJIの食養生を楽しむバー、お香の調香体験を行うラボ、ブランド初となるギャラリー。「お匙 京都」は酒を醸す蔵の記憶と養生の文化に着想を得た、OSAJIによる健やかで美しい皮膚を保つための“暮らしの処方”を受け取ることができる場所です。
また、日本発のブランドとして、本質的な日本の美意識や思想と向き合い続け、テーマである”醸す”という言葉の通り、土地や人々、時とともに変化し醸成していく、余白と揺らぎのある場を提案してまいります。
-
午後
午後に起きるのはひさしぶり。このごろはくたくたになるまで働いたり遊んだりで、朝を迎える前に眠って、朝になったら起きて、のような暮らしだったから。こんなに穏やかな午後に、ひとりの部屋でぽつんと起きてみたら、なにをそんなにがんばることがあるのだろうって思ってしまう。カーテンをあけたら、遠くのほうまで雲がたくさん。

-
あたらしい自分になれるかもしれない、みたいな期待はいつからかしなくなったね。いまの自分でも、まあ、じゅうぶんか、でも、もうちょっとくらいはさ、というような感じになってきたね、かなり自然に。などと、しばらく会っていない友だちと昨日の夜は連絡をとり合った。顔もからだも髪の毛も、気に入らないところだらけだったのに、もうわたしたち、どうであってもいい感じ。
そういうわたしを、いまのわたしは気に入っている。

-
寝室をでて、お香に火をつける。胸のうちがすんとする、けむりはゆるく部屋にひろがる。ソファーに横たわり、ひじ置きに頭をあずける。鼻からゆっくり息を吸う。落ちつくにおい。天井へ両足を伸ばして、ばたばたとする。起きたての足はすっきりとしてきれい。そのかわり、顔はむくんでたまらない。軽く息を吐いたら、おなかが鳴った。このところ外食が続いていたので、冷蔵庫には生姜のチューブぐらいしかない。いまわたしは何を食べたいだろう、わからない。
よっこら起き上がり、洗面台で顔を洗う。風の通るようなにおいのする化粧水をつける。他人事みたいな肌に水がたっぷり入っていく。さっぱりとしていいきもち。目も開いた。

-
部屋着のままで上着を羽織って、裸足にサンダルで近くのスーパーまで歩く。あ、すずめ、と思ったら名前のわからない小さな鳥だった。飼い主を見上げながら、わらって歩く犬がいる。青果店の奥で、店主とおぼしきひとが新聞をひろげて、読んでいる。そういえば、ここで買いものしたことないな、と足をとめる。すると、うつくしく積んである果物に目をうばわれる。つやのある、色の濃ゆい、たっぷりとふくらんだそれを手にとり、これをひとつ、やっぱりふたつください、と口にだす。店主とおぼしきそのひとは、立ち上がり、口元をややほころばせる。やりとりがあり、受けとる。薄いビニールに入ったそれは透けている。日に当たってきれいと思うこころがうれしい。じゅうぶんに光を吸い込んだ、余裕のあるにおいが、うっすらとある。

-
台所に立ち、小さなナイフをとり出して、皮をむく。ていねいに、ゆっくりと、剥がれにくいシールをとるときみたいに慎重に。こぼれるように、指にしたたる。目をほそめて、まじまじ向き合う。ひとくちぶんになったそれを、口へはこぶ。食む。鼻からかおりがぬけて、力がぬけて、これがわたしの欲しかったものだとわかる。

Written by 小原晩
Director’s Message
現代における日本の「オーセンティシティ」とは、一体何なのでしょうか。
茶道や華道、禅、あるいは数寄屋造り。それらは確かに素晴らしい遺産ですが、単に過去の様式を懐古的にオマージュすることが、現代における日本の本質的な様式美であるとは私は思えないのです。
日本が本来持つ美意識や思想は、長い歴史の中で外来の文化と混ざり合い、化学反応を起こしながら形を変えてきました。そして今も、環境や科学の変化と共に変容し続けています。普遍的な価値とは、不変のものと変わり続けるものの間で、静寂と喧騒がマーブル状に混ざり合う、その「揺らぎ」の中にこそ宿るのではないでしょうか。
築100年を超える、かつての酒蔵。神事から人々の縁を繋ぐ触媒へと至った酒造りの歴史。その延長線上に、私たちは現代の「醸し場」を拓きます。
歴史ある建物が醸す美、目に見えない菌が醸す恵み、そして一人ひとりが自らの魅力を醸す術。伝統の中に現代の情熱や衝動が絡み合う、混沌とした心地よさ。この場所に流れてきた時間と、これから流れていく時間。その交差点に、今、OSAJIとしての「意志」をひとつの点として打ちたいと思います。
決して正解のない問いを、探究し続ける者として。
Director 茂田正和
